ショウキチシリーズ
第四話「ハネマーン?」
皆様お待ちかねの警察編・・・は、ちょっと置いといて。最近思い出した、高校生の頃のお話を一篇ご紹介しましょう。
但しこれは麻雀ネタですので、麻雀を知らない方には理解しにくいお話かもしれません。しかし、ショウキチの人間性を如実に表す逸話として、以前からシリーズに入れようかと悩んでいたお話で、つい最近、ショウキチ軍団の一人から、是非掲載するようにと言われました。麻雀に関する説明を加えておきますので、麻雀をご存知無い方も、まあ一読してみてください・・・
有志麻雀友の会の、会合の時でしたから、高校2年生か3年生の頃のお話です。
麻雀を憶えたてで、嬉しくてしょうがないショウキチは、毎週欠かさずH君の家に麻雀を打ちに来ていました。
しかし、その割には少しも上達せず、点数の計算も出来ず、変なチョンボを連発して、私たちに笑いを与えてくれました。
そんなある日の事でした。
いつもの通りメンバーが集まり、いつもの通りに麻雀が進行していきました。
そして、東場でショウキチが西家という局面で、ショウキチは
と
を泣いていたと思います。
ショウキチは、上がる(注@)ことよりも聴牌(注A)をすることのほうが嬉しい、という習性がありました。
以前にも、リーチ(注B)を掛けたいがために、
「お願いやから、通してくれ〜」
と、オープンリーチ(注C)に振り込むという暴挙に出たことがありました。
(当然、オープンリーチをした人が、ショウキチの捨牌を見逃すことはありませんでしたが)さて、ルンルン気分で、
「オリャー!」
とか、
「キャホホー」
とか、奇声を発しながら牌をツモっていたショウキチが、何枚目かの牌を引いたとき、
「あ。ローン、ロンロンロン」(注D)
と、手牌をパタリと開けました。ショウキチの牌を見た他の3人は皆、ギクリとしました。ショウキチの手牌の中には、
と
も、あったのです。
なんと、」小四喜(注E)の役満ではありませんか。
3人で目配せをしながらショウキチを見ていると、満面の笑みをたたえ、指を折りながらショウキチは、
「東、西、ホンイツ、デンデン。マンガーン!」
と言っているのです。ショウキチが、役を数え間違えるのはいつものことなので、私たちは素知らぬ顔で、
「へー、マンガンか」
「うわー、すごいな!」
と言っていると、その雰囲気を敏感に察したショウキチが、
「いや!待て!崩すなよ。まだやぞ。えーと、えーと」
と自分の牌を見て考え始めました。ショウキチは、私たちの怪しさを動物的な感で察知することがあります。
そのときも、私たちの様子がおかしいと感じたのでしょう。
しばらく考えた末に、
「あー!これ、あれやがな!」
と、なにやら気がついたようです。私たちは、しかたなく役満分の点棒を支払おうとしたとき、ショウキチが、
「これ、トイトイもあるやんけぇ。東、西、ホンイツ、トイトイ、デンデン(いちいち数えないと計算が出来ない)。ハネマーン!ヤッホー!ウッシー!」
と、ハネマン分の点棒を私たちに要求してきました。この辺は私たちも心得たもので、
「くっそー、解ってしもたか」
「残念やなぁー」
と言いながら、ショウキチに点棒を渡したのです。ショウキチが、
「ウホッホー、ホッホー、ウオー、ドンドンドン」
と、ゴリラのように勝ち誇っている間に、私たちはさっさと山を崩して、次ぎの局へと移行していきました。(注F)サイコロを振って、鼻歌交じりで牌を取るショウキチに、
「ショウキチ。小四喜って知ってるか?」
と、誰かが質問しました。「え?ショウスウシイ?」
と聞き返すと、その数十秒後、ショウキチは急に固まって、ボロボロと大粒の涙をこぼしました。
注@…「上がる」−最終的に手牌を完成させること。上がることによって、「役」に見合った点数がもらえる。要は、麻雀では上がらなければ勝てない。(戻る)
注A…「聴牌」−テンパイと読む。あと1枚、何かの牌がくれば上がれる、という形になること。当然、聴牌をしていなければ、リーチは掛けられない。(戻る)
注B…「リーチ」−聴牌したときに、リーチを宣言すると、通常よりも役が高くなる。そのとき、自分の捨牌を横に向け、供託として千点棒を卓上に出す。ただし、リーチを掛けると、自分の手牌は変更出来なくなるので、自分の上がり牌以外は、そのまま捨てなければならない。(戻る)
注C…「オープンリーチ」−自分の手牌を皆んなに見えるように開いてリーチを掛けること。通常のリーチよりも役が高く、上がったときにたくさん点数がもらえる。普通、自分がリーチを掛けていないときにオープンリーチに振り込む馬鹿はいない。(戻る)
注D…「ロン」−他の人が捨てた牌で上がるときに言う言葉。自分で上がり牌を引いたときは、「ツモ」と言うのが正しい。ショウキチは未だに、「ロン」と「ツモ」の区別がつかないようである。(戻る)
注E…「小四喜」−ショウスウシイと読む。役満のひとつで滅多にお目に掛かれない。当然、得点も通常よりも遥かに高い。ちなみに、
こんな形である。(戻る)
注F…私たちのルールで、次ぎの局が始まってサイコロを振った時点で、前局の点数の再請求は出来ないことになっている。(戻る)