ショウキチシリーズ
第二話「えっ、0点!?」
高校1年生のとき、私とショウキチは隣同士のクラスでした。
しかし、縁は異な物と申します通り、2年生になると二人は、成るべくして同じクラスになったのです。私は、クラス編成の担当をした教師が、わざと仕組んだものと今でも思っています。
その事件が、いつ起こったことだったのか、私の記憶は定かではありませんが、状況から察するに、多分、2学期の中間テストだったと思います。
テスト前と、テスト期間中は、だいたい授業時間は午前中だけ、しかもクラブ活動も停止されますから、午後からは、試験勉強をみんなで集まってする、ことはなく、ここぞとばかりに麻雀に明け暮れておりました。
結果は、言うまでもなく赤点の嵐。 しかし、冷酷な偏差値社会に対抗すべく行動している私達にとっては、そう言う結果を恐れることは無く、先生の小言を聞く耳も無く、結果を親に見せる度胸も無く、飄々とクラブ活動を再開し、周りのヒンシュクをかっていました。
その日は、グラマーの試験が返って来る日でした。珍しくショウキチが学校を休み、もう一人同じクラスになっていた水泳部の友人、ナイサン(仮名:当時17歳)と、
「どうしたんや、あいつ」
「珍しいこともあるもんや」
と、噂をしていたのですが、そのすぐ後に、想像も出来ないような恐ろしいことが起ころうとは、その時の二人には知る由もありません。グラマーの授業が始まり、テストが返ってきました。
後でナイサンと見せ合いっこをすると、ナイサン、5点。私、7点。
勝ちました。悔しがるナイサン。勝ち誇る私。
と、グラマーの先生が、ショウキチはどうしたと、私達のところに聞きに来たのです。その手には彼の答案用紙がヒラヒラとはためいていました。
その用紙を見るともなしに見てしまいました。
紙の隅っこに赤で書かれた、「2」の数字。先生は明日職員室まで取りに来るように伝えておいてくれと言って、去っていきました。
翌日、ショウキチが出てきたので、テストを取りに行くように言うと、
「おい、おれ何点やった。おまえ見たんやろ。なー、何点やったー」
と、あまりにしつこく迫ってくるので、ちょっといたずら心が出た私は、
「おう、見たぞ。0点やった」
と、言ってやりました。ショウキチはビックリして飛び上がり、
「え〜〜〜、レ、0点ンンンーーー」本人は声を押さえているつもりなんでしょうが、クラスのみんなの耳に入ったのは、間違いありません。
「うそやろ〜な〜うそや言うてくれ〜。あかんわ、おれ、すぐ行ってくるわ」
と、教室を飛び出していきました。ナイサンと二人で、クスクス笑いながら待っていると、ショウキチが烈火の如く怒りながらすっ飛んできて、いきなり私の首根っこをつかみ、こう怒鳴ったのです。
「おまえ!ビックリさせんなよー!ちゃんと2点あるやないかー!」
クラス中が大爆笑になったことは、言うまでもありません。