ACという概念


 このページは、他のページとは趣向が違います。おふざけやチャチャ入れは無しにして下さい。
 また、このページでの発言の責任は全て著者自身が負います。内容の訂正や反論、ご質問等は掲示板ではなくメールでお願いします。

 ACという言葉は、病名ではありません。ACとは、たとえば医者やカウンセラーが「あなたはACです」と、宣言するものではなく、本人の自認によるものです。
 AC自体は病気ではありませんが、そこから、“うつ病”や“うつ状態”また、アルコール依存症やその他の薬物依存症になったり、嗜癖(しへき)問題を抱えたりすることはあります。

 それでは、ACとはどういう概念なのでしょうか。
 アルコール依存症者の回復を援助する者たちの間で、本人のアルコール問題だけでなく、家族や周囲の人々のアルコール依存症者に対する共依存関係が指摘され、その人々も含めた援助が必要であることは、かなり以前から取り上げられていました。
 アルコール依存症者が、家族や周辺の人々に、迷惑を掛けたり、影響を及ぼしたりすることを避けて通ることはできません。回復のための適切な援助を受ける前には、たいていの場合、アルコール依存症者の家族や周辺の人々は、アルコール依存症本人の『お酒を飲む』という行為の手助けを、意識しないままに行ってしまっているものなのです。

 たとえば、アルコール依存症者の妻や夫の場合、お酒が無いと本人が暴力を振るう、大声を出して近所への体裁が悪い、飲みすぎて朝起きれないので会社に嘘の電話を掛ける、道端や知らない場所で寝てしまって連れて帰らないといけない、警察に連行されて引き取りに行く、等々、直接的にも間接的にも本人が『お酒を飲む』行為を助けてしまっています。
 しかし、アルコール依存症や他の依存症(薬物・仕事・買い物・ギャンブル、他にもたくさんあります)や嗜癖問題については、ここでは深く取り上げることはできませんので、別の機会にさせて頂きます。

 さてACとは、そういうアルコール依存症者を抱える家庭に育った子供たちや、他の問題を抱える機能不全家庭に育った子供たちが感じる、生き辛さを自認することだと私は考えます。(概念ですので、他者とは違うとらえ方かもしれません)

 具体的にどういうことかと言うと、たとえばアルコール依存症者を抱える家庭(何度も引き合いに出してすみません。一番解かり易く、AC概念を生み出した発端ですので)に育った子供たちは、早くから大人になることを迫られます。お酒を飲んで、だらしのない父親(または母親)。そして、その人の世話にかかりっきりになる母親(父親)。自分が子供であることが、許されない家庭の状況に追い込まれてしまい、家庭の仕事や、家族の問題に対する自分の在り様も考えなければならなくなってしまいます。
 アルコール依存症者本人に気を使い、その配偶者に気を使い、世間体に気を使い、自分がしっかりしなければ駄目だ。自分がしっかりしないから、この家族は駄目なんだ。果ては、父親(母親)や家族がしっかりしないのは、しっかりしない自分が悪いのだ、と思い込んでしまうようになります。

 ですから、周りの人から見れば、人付き合いが良くて、気がきいて、しっかりした、とても『良い子』に見えます。
 そのまま、大人になって行く過程で、『良い子』をやめる訳にはいきません。大人になるまで、いえ大人になってからでも、たとえ、親のアルコール問題等が(いろんな意味で)無くなっても、今度は周囲の目に答えるために『良い子』を演じ続けていかねばなりません。

 しかし、本人に内在する問題が解決されている訳ではありません。それどころか、ますます大きくなっていくことでしょう。
 常に、『良い子』を演じ続けなければならない自分。子供の頃に、『子供らしさ』を発揮できなかった自分。親の愛情をちゃんと受け取ることが出来ず、また、自分の愛情をちゃんと親に受け取ってもらえなかった自分。結局そういった、『自分でない自分』を、ずっと演じ続けてきた自分を、認めることが出来るでしょうか?自分を好きになることが出来るでしょうか?自分を愛することが出来るでしょうか?

 ACを自認する人たちは、いつも『生きづらさ』を感じていると思われます。そのために、いろいろな依存症になったり、嗜癖行動をとったりすることがあります。たとえば、アルコールや薬物に依存したり、摂食障害(拒食・過食)になったり、または、うつ状態や躁鬱、他の精神障害を引き起こしたりすることも少なくありません。

 最近では、AC関連の書籍なども多数出ており、インターネットでも紹介されています。その全てが良好なものであるかどうかは、私にはわかりません。しかし、本を読んだから大丈夫とか、生半可な知識で、他者を救ってやろうなどとは思わないで下さい。
 もし、「自分はACかもしれない」とか、「あの人の生き方は辛そうだ」とかを感じたのなら、まず、専門治療を受けることをお勧めします。
 近年では、ACに限らず、様々な依存症・嗜癖問題・精神障害の方の回復のための援助をする方法・施設もずいぶん整ってきています。専門病院や医院・診療所・クリニック、また、回復者の自助グループもたくさん出来ていますし、いろんな所にあります。
 精神科や神経科は、昔に比べてずいぶん敷居が低くなってきたとはいえ、まだまだ躊躇される方も多いでしょう。しかし、ほんのちょっとだけ勇気を出して、今の自分の『生きづらさ』を少しでも軽くしてほしい。私はそう願っています。
 多くの、回復者の方が、そう願っていることだと、私は思います。

 最後に、昨今の社会が、身体に障害を持っている方々に向けられる目は、福祉やモラルの向上によって、ずいぶん広く、温かくなってきています。同じように、精神に障害を持つ方々にも広く、温かく接して頂けるように、こびりついた偏見を捨てて頂けるように、祈っています。

 

ご質問・ご意見等は E-mail へお願いします

月のお話   目 次   時間のエネルギー

トップへ戻る