第四話 記憶

 

 私がここで怖い話を書いてるのを見て、私の知り合いのMさんからメールが来ました。

 そして、Mさんの友達、涼子さん(仮名)の体験談を話してくれました。

 

 私が(以下、涼子の話)まだ小さかった頃、母方のお祖父さんのお葬式がありました。

 お葬式には叔母さん(母の妹)も来られていたのですが、叔母さんは自分の父親の死にひどく落胆していて、母が「みっともないから」と別室へ連れて行ったほど泣きじゃくっておられました。そして、そこで母が叔母さんを慰めていたのを憶えています。

 それと、お葬式などのとき、子供たちはひとつの部屋にまとめられることってありますよね。

 食事の時間になって、母が子供たちに「大人しくしているのよ」って言いながら、食べ物を渡している姿も憶えています。

 でも、なにかおかしいんですよ。

 別室で叔母さんを慰めている母の姿。

 他の子供たちに食べ物を与えて、優しく語り掛けている母の姿。

 なのに、どうして自分だけ無視されているんだろう。

 そのときのことを、私は大人になってから母に尋ねてみました。

 すると母はみるみるうちに青ざめて、声を震わせながらこう言いました。

「涼子!あんたって気持ち悪い子だねっ!あの時、涼子はまだお母さんのお腹の中にいたんだよっ!」

 

第3話 トンネル   目 次

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